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平成16年、保津川下りの船頭さんが保津川渓谷の自然景観に影響を与えるペットボトルやレジ袋、発泡スチロールなど、流域に漂着するプラスチックごみとの戦いに挑んだところから「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」に至る流れはスタートします。
平成19年3月には、保津川遊船企業組合の中にエコグリーン委員会が誕生し、組織的な清掃活動が実施されるようになりました。
しかしながら、拾っても拾ってもなくならない漂着ごみ。大雨などで保津川が増水すると、きれいになった保津川が再びプラスチックごみだらけになります。「自分たちの清掃活動には意味があるのだろうか」と心が折れそうになる委員たち。そんなエコグリーン委員会の活動に意味を与えたのは、地球規模の問題となっていた海洋プラスチック汚染でした。清掃活動を始めた船頭さんの一人である、豊田理事長は「保津川でのプラスチックごみとの戦いは、結果として下流にプラスチックごみを流さない、海洋プラスチック汚染という大きな戦いにつながっている。自分たちの戦いに大きな意義があることに気付くことができた」と想いを語ります。
そして同じ頃、保津川流域の環境保全を目的とした特定非営利活動法人プロジェクト保津川(原田禎夫代表理事)が平成19年7月(法人設立は平成20年3月)に誕生。このプロジェクト保津川が月に1度実施する保津川クリーン作戦は地域と共に流域の関係者へ大きく広がり、その認知度は淀川流域、さらには国内外のNPOやNGOなどの関係者にまで広がりました。
こうした取組にNPOや関係団体、行政が賛同、大きな流れとなり、平成24年に内陸部の自治体で初となる海ごみサミット2012亀岡保津川会議が国・府・NPO・NGOなど国内外の関係者700人以上を一堂に会して開催されることとなります。
海ごみサミット2012亀岡保津川会議では、「亀岡保津川宣言」「川のごみや海のごみをともに考える京都流域宣言」を採択、内陸部におけるプラスチックごみ発生抑制の取組や社会のルールづくり、そして川の流れのように全国につながる大きな流れを創造していく想いを参加者全員が共有して閉幕しました。
このサミット翌年の平成25年には、サミットの両宣言に賛同し、宣言の内容の具現化を目指し、保津川でつながる市民、企業、団体、大学、NPO、行政15団体が参画する「川と海つながり共創(みんなでつくろう)プロジェクト」を設立、「保津川の日(本市最大の清掃イベント)」や「こども海ごみ探偵団(環境学習)」など多くの市民、次代を担う子どもたちとともに現在も発生抑制対策に取り組んでいます。
さらに亀岡市は、住環境・自然環境をより向上させ、「世界に誇れる環境先進都市」の実現を目指した取組を進めています。平成30年3月には、循環型社会の構築のため「亀岡市ゼロエミッション計画」を策定しました。
近年、海洋プラスチック汚染の問題は、その深刻な状況がクローズアップされており、世界中の国々で、削減に向けた取組が進められています。国内では2020年7月からプラスチック製レジ袋の有料化がスタートし、実効的な資源循環や海洋プラスチック対策など、2025年までに使い捨てプラスチックごみ25%削減を目標とする削減対策が加速しています。
こうした流れの中で、亀岡市は平成30年12月13日、亀岡市議会とともに「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行いました。
宣言2日後の12月15日、国連では、2025年までにプラスチック製のレジ袋やストロー食器の使用をやめたうえ、最終的には使い捨てプラスチックの全廃を目指す戦略を各国がつくるなどとする国連環境計画(UNEP)の閣僚宣言案が明らかとなりました。さらに12月21日、EUでも28カ国全てが、ストローや食器など10種類の使い捨てプラスチック製品を2021年までに廃止することに合意しています。
今まさに、世界は使い捨てプラスチック廃止に向けて動いています。
本市が、使い捨てプラスチック削減の第一歩として取り組むのがプラスチック製レジ袋の削減です。まずは、レジ袋の有料化とエコバック持参を呼びかけ、プラスチック製レジ袋の全体量を大幅に削減したうえで、全国に先駆けてプラスチック製レジ袋提供禁止条例を制定、本市における社会のルールづくりを進めます。全国初となる条例は、広くメディアに取り上げられ、日本国内に止まらず、中国や台湾でも報道されています。この条例を始めとする使い捨てプラスチック削減に向けた本市の取組が、日本社会を動かす布石となり、広く波及することを願うところです。
しかしながら、プラスチック製レジ袋の提供禁止は一つの手段であって、目的ではありません。今後も、使い捨てプラスチックごみゼロを目指して、さまざまなプロジェクトを展開してまいります。
使い捨てプラスチックごみゼロに向けた取組は、社会全体での理解と協力が不可欠です。海洋プラスチック汚染の問題は長期的な視野での持続可能な取組を続けていかなくてはなりません。そのためにも、「環境保全」と「地域経済の活性化」が一体となったまちづくりを進めていく必要があります。一人ひとりの意識、行動をつなげ、大きな動きを創り出すことが今、求められているのです。