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SDGsの取組み最前線! 亀岡市の事業者紹介(かたもとオーガニックファーム)

ページID:0051998 更新日:2023年7月4日更新 印刷ページ表示

「亀岡市民の『食』への意識を変えたい」無農薬自然栽培のかたもとオーガニックファームの挑戦

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亀岡市では有機農業への取り組みが活発になっています。2021年には、市内で生産された有機農産物を給食で使う「かめまる有機給食の日」の導入が始まり、給食に提供する有機米の生産プロジェクトが発足。さらに、2023年2月、亀岡市は有機農業を推進する「オーガニックビレッジ宣言」を行いました。

そんな中で「亀岡市民の食への意識を変えたい」という想いを胸に、農家としてさまざまな活動をしているのが、かたもとオーガニックファームを営む片本満大(みつひろ)さんです。2017年に農家として独立した片本さんは、現在は2ヘクタールの畑で、年間60品目以上もの野菜を無農薬自然栽培で育てています。

2022年3月には、農薬や化学肥料などの化学物質を使用せずに栽培されたことを認証する「有機JAS」を取得。育てた野菜が亀岡市の給食に採用されました。他にも、味噌づくりや田植え、収穫などのイベント、畑でのキャンプなどを通して、オーガニック野菜の良さを伝える活動もしています。

本記事では、なぜ片本さんが無農薬自然栽培で野菜を育てるようになったか、さらには、食に対する想いを伺いました。

 

自然に近い畑を。雑草・虫・微生物のなかで野菜を育てる

亀岡市篠町森にあるかたもとオーガニックファームに着くと、2ヘクタールある畑を案内してもらいました。トマトやバジルなど5種類ほどの野菜が一つの畑にあるなか、雑草も一緒に育っています。なぜ、雑草と共に多様な野菜を同じ畑で育てているのでしょうか?

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片本:なるべく自然に近い状態の畑にしたいからです。森に入ると、いろんな植物が生息してるでしょう?一種類の野菜が畑を独占するのではなく、トマトやバジル、ルッコラなどをランダムに植えています。

雑草と一緒に育てるのは、虫の温床を防ぐためでもあります。そもそも、除草剤で枯らしてしまうと、食べるものがなくて虫が野菜にきてしまうんです。雑草があることで、虫が分散します。また、植物が多様であれば、畑にくる虫も多様になります。例えば、アブラムシがいて、それをてんとう虫が食べるような連鎖が発生するため、一つの虫が過剰に発生するような「虫の温床」は発生しづらくなると考えています。

次に、土に注目してみましょう。かたもとオーガニックファームの畑は、畝が裸にならないよう草を敷き詰めたり、土を耕さない「不耕起栽培」を採用しています。

片本:なるべく土をかき乱さないように気をつけています。畝に敷き詰めた草や地中に残っている根を、微生物をはじめとした生物が分解してくれるからです。耕すと土壌の構造が崩れてしまいます。

また、畝が裸にならないようにするのは、風や水による土の流失を防ぐためです。土がむき出しの状態は、自然界では砂漠くらいしかなく、植物が育ちにくい環境なんです。

 

畑の近くには落ち葉や草が積まれており堆肥化をしている。畝の間にそれらを敷き詰めて土がむき出しにならないように工夫している。

 

では、一種類の野菜しか育てなかったり、土がむき出しだったり、なぜ現代の農業はそのようになっているのでしょうか。その理由を「農業が工業化しすぎてしまっているからだ」と片本さんは語ります。

片本:現代の農業は、より効率的に大量生産することを重視しています。そのため、機械で収穫しやすいよう一種類の野菜しか植えていなかったり、収穫の邪魔になる草は除去しがちです。また、除草剤や農薬の影響で土が痩せてしまい、土が痩せると化学肥料に頼ってしまうから弱い野菜になってしまう。そんな循環に陥ってしまっているのです。

地球ができたばかりの時代は、土はなくて、岩石と岩石が風化した砂しかありませんでした。そこから苔が生えて、枯れた苔を微生物によって分解して、それを何万年も繰り返して土ができ、森ができていきました。「落ち葉や草は燃えるゴミに」「虫は除去するもの」という認識の人が多いですが、地球にとっては大切な存在なんです。

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「この野菜はどこから来る?」そんな疑問から辿り着いた無農薬自然栽培

片本さんが農業と出会ったのは、父親がやっていた家庭菜園がきっかけでした。「大量に採れたトマトを使った無水カレーの味に感動したのを今でも覚えてます」と語る片本さんは、自分で育てた野菜が美味しいという感覚が子どもの頃からあったそうです。

そんな経験もあり「55歳になったら農業をしよう」と考えていた片本さんは、大学卒業後、自然の起伏を活かしたモトクロスライダーとして活躍していました。しかし、35歳のときにモトクロス競技の練習中に大転倒で大怪我を負ってしまいます。そこで、37歳から農家としての新たな一歩を踏み出したのです。

農業をするなら無農薬・有機栽培で育てようと決めていた片本さん。それは京丹後市弥栄町のオーガニック農場兼カフェを営んでいるビオ・ラビッツ株式会社(旧梅本農場)との出会いが大きく影響していると言います。

片本:ビオ・ラビッツは、無農薬で落ち葉などの有機を使った栽培方法で野菜を育てています。それまでの私は石灰や肥料を使った栽培方法で家庭菜園をしており、「本当に落ち葉で野菜が育つのか!?」とびっくりしました。

家に帰って実践してみると、ちゃんと野菜が収穫できて驚きましたね。そこから、コンビニの弁当やスーパーの野菜がどのように育てられているかが気になり、色々調べるなかで、農業をやるなら無農薬自然栽培の野菜を育てたいと思いました。

無農薬自然栽培で始まった農家1年目。37aだった畑は、今では2ヘクタールになり、年間60品目以上もの野菜を育てるようになりました。

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亀岡の給食から無農薬自然栽培を広げていく

就農時に片本さんは「5年以内に自分で作った野菜を給食に提供しよう」と目標を立てていたそうです。それは子育てをしていて「自分の子どもだけでなく、たくさんの子どもたちにオーガニック野菜を食べてほしい」という想いからでした。

しかし、当時は有機栽培の野菜を給食に提供する仕組みがなく、どこに問い合わせたらいいかもわからなかったそうです。とりあえず市役所に足を運び、市議会議員の菱田光紀さんとの出会いが目標の実現へと大きく突き動かしました。

片本:当時は何も分からなくて手探りでしたが、菱田さんと出会えて大変感謝しています。菱田さんは市議会議員をする側で専業農家もしていることから、有機給食にも共感してくれて。また、現市長の桂川孝裕さんは東京農業大学農学部卒業のバックグラウンドがあり、ちょうど市としても有機農業を進めていこうと模索している時期でした。

そのような中、亀岡市では2021年から市内3つの保育園とこども園で、月に一度「かめまる有機給食」がはじまりました。野菜の配達まで仕切る「かめまる有機給食協議会」は菱田さんが取りまとめをされています。

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「かめまる有機給食」の日を設けたり、オーガニックビレッジ宣言をしたり、着々と「オーガニックビレッジ」構想の実現に向かっているように思える亀岡市。しかし、農家はまだ少なく「まだまだ理想にはほど遠い状態」と片本さんは話します。

有機農業が市全体に広がっていくためには、どうすればいいのでしょうか。農家として活動する片本さんは「給食が鍵になる」と見解を語りました。

片本:まだまだ亀岡市民は、オーガニック野菜をわざわざ選ぶ人は少ない状況です。そんな状況下で、有機農業に切り替えても、収益が下がる可能性が高いだけです。また農薬や化学肥料を使用した農業と有機農業では、育て方も大きく違い、切り替えタイミングでは収穫量が下がりやすいです。

そこで給食が大いに活用できると思ってます。まず、有機野菜の販路先として亀岡市内の給食を確保。有機野菜のほうが収穫量が少なく値段が高い傾向にあるため、給食の費用も上がる可能性がありますが、各家庭へ求める給食費は変えず、差額は市の補助金などで補填することも策もあるなと考えています。有機農業を広めたいなら、切り替えた際のリスクを小さくする仕組みが必要だと考えています。

さらに、当たり前のように無農薬自然栽培の野菜が給食で使われることで、食への意識を子どもたちから変えたいという片本さん。「『今日の給食は美味しかった!お父さんの畑もオーガニックだよね!』みたいな会話が家庭で発生してくれると嬉しいなと思ってます」と子どもたちへの想いを語りました。

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「週末は野菜を買うために畑へ」そんな人たちを増やしたい

農業6年目に入り、目標だった給食への提供も果たした片本さん。今後はどのようなことを目指すのでしょうか。

片本:亀岡市民が直接畑に来て、自ら必要な野菜を収穫をする風景を作りたいです。理想は、私が収穫するのは自分の分だけになること。そのためにも、家族で畑に来やすいように、お花畑や遊び場を作る計画をしています。

また、かたもとオーガニックファームに訪れる人たちが、育てる側に回ってほしいですね。私が管理する畑は2ヘクタールが限界だなと思ってるので、たくさんの人に畑を貸し出して、拡大していきたいです。

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亀岡市SDGsアドバイザー高木超氏のコメント

「かたもとオーガニックファーム」の取組みをSDGsの個別目標で見ると、例えば、落ち葉や草を堆肥化して利用することは、目標12「つくる責任 つかう責任」に貢献しますし、片本さんが菱田市議や桂川市長との出会いを通じて、これまでにない展開につなげている点は、目標17「パートナーシップで目標を達成する」ことを体現したアプローチと言えます。

また、私たちが生活する上で不必要で、処分すべき存在と認識としてしまいがちな落ち葉や虫を、SDGsの目標15で示された「生物多様性を保全する」という視点から、大切な存在だと片本さんは捉えています。このように、今回の記事からは、SDGsが有する多様な視点を用いて、色々な角度からモノゴトを見ることの重要性が伝わってきます。

高木先生

 

 

 

 

 

高木 超(たかぎ こすも)

亀岡市参与(SDGsアドバイザー)

▶ 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教
▶ 国連大学サステイナビリティ高等研究所
  いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット 研究員

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