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SDGsの取組み最前線!亀岡市の企業紹介(南丹清掃株式会社)

ページID:0035541 更新日:2022年6月24日更新 印刷ページ表示

「亀岡の豊かな自然を子どもたちに」南丹清掃株式会社から広がる環境保全の取り組み

南丹清掃

本インタビューは、より身近なSDGsの事例を知っていただくために、亀岡市内でSDGsを積極的に推進する事業者の実践事例を紹介します。

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「ごみ」の問題は、深刻化しています。ポイ捨てしたごみは、風に吹かれ、川から海へと流れて海上汚染に繋がります。また、分別をせずに多くのごみを焼却してしまえば、その分CO2排出量は多くなってしまこのように、日々モノを消費している私たちは、「正しく捨てる」という行動が案外できておりません。

それらの課題を解決しようと奮闘しているのが「南丹清掃株式会社」です。同社は、下水道処理施設維持管理や浄化槽清掃業、一般・産業廃棄物収集運搬業など、多岐にわたって事業を展開しています。

また、事業以外にも地域の清掃活動を月2回実施していたり、小学生にごみの分別方法や自然の自浄作用など環境学習を提供しています。

「1966年創業当社から、市民に好かれる企業を目指してきた」と語るのは、常務取締役の白木由温さんです。なぜ、南丹清掃が地域の清掃活動や小学生たちに環境学習を提供しているのでしょうか?また、取り組みのなかで地域の住民にどのような影響があったのでしょうか?

常務取締役の白木由温さんと総括事業部兼総務部部長の山本一文さん、環境事業部長の山本尚さん、総務部の大山恵美さんの4名にお話を伺いました。

 

3Kの印象を取っ払い、市民に好かれる企業へ

南丹清掃の創業は、まだ下水道が普及していなかった1966年にまで遡ります。当時は、し尿を回収する「汲み取り業者」が下水道の代わりであり、地域の大切なインフラを担っていました。

しかし、地域には汲み取り業者が1つしかなく、他になかなか汲み取り業者をする人がいなかったそうです。そこで、「私が汲み取り業者をやる」と申し出たのが南丹清掃先代代表の山本時次郎さんでした。

南丹清掃は7〜8人で創業し、地域の汲み取り業者として事業を開始。その後、微生物の働きによって生活排水を綺麗にする「浄化槽」の清掃・点検、そして下水道が普及してから約50年間下水道の維持管理をしてきました。

今では、亀岡市内に本社のある唯一の「下水道維持管理業者」であり、地域の水環境の浄化に貢献しています。

昭和56年に入社し、南丹清掃の変遷を見てきた白木さんは、「『市民に好かれる企業』を掲げて事業を運営してきた」と語ります。

白木:私が入社した当時は、反社会的な団体が汲み取り業者にかかわっているというイメージが社会にありました。きつい・汚い・危険という3Kの印象もあり、住民からよく思われていませんでした。

そこで、「市民に好かれる企業」を掲げて、町内の清掃活動に積極的に参加し、ときには「手伝うことありますか?」と声をかけたりゴミの分別の仕方をお伝えしたりと、住民との関係を大切にしてきました。

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常務取締役 白木由温さん

そして時を経て、下水管や一般・産業廃棄物の処理が社会的にも重要だと認められ、住民の意識も変わってきたと言います。

山本一文:社会的な移り変わりも後押しして、下水管理や産廃業者の印象も変わったのではないかなと思います。私が入社してから一度も、住民からの冷たい態度を感じたことはないですし、むしろ、みなさんとても優しく接してくれます。

むしろ、地球温暖化や深刻なごみ問題が浮き彫りになっている中、「下水管理や清掃活動などは大事だ」という思いが強くなっているなと感じます。

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総括事業部兼総務部部長 山本一文さん

 

「陸のごみを収集し、川を綺麗に」それが南丹清掃の役目

南丹清掃では、地域の清掃活動を約10年間続けています。特にここ4〜5年は、清掃活動を月2回に頻度を上げ、さらに力を入れてきました。

山本一文:京都府亀岡市を流れる保津川を中心に活動をしている「特定非営利活動法人プロジェクト保津川」が川を守り、南丹清掃は川にごみが流れるまでを食い止めるという立ち位置で清掃活動をしています。

数年前から市民参加型にしていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて現在は従業員がボランティアで実施しています。

どこを清掃するかは山本さんと大山さんで事前に決め、従業員に周知します。また、清掃活動は道路に落ちているごみの回収だけではなく、山奥に捨てられた家電や家具などの不法投棄にも対応しています。

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左が大山恵美さん

山本一文:不法投棄は、捨てられた場所の地主さんが撤去するルールになっています。でも、実際に地主さんがその土地に住んでいなくてごみが捨てられている事実を知らなかったり、気づいても大型家電や家具を1人では対処できなかったりします。

そこで、南丹清掃が重機を使って、撤去作業のお手伝いをしているのです。

不法投棄

不法投棄は全国で深刻な課題となっていて、2010年には罰金を「1億円以下」から「3億円以下」に引き上げられました。

また、不法投棄を撤去するのには、重機を動かすガソリン代や家電や家具の処分に費用がかかります。その費用を南丹清掃が負担しつつ、活動を続けています。

山本一文:活動を続けていると、徐々に不法投棄の数も少なくなってきました。今では議員や地主さんから直接不法投棄について相談を受けることも増えましたね。

 

子どもたちに楽しく学べる環境学習を

地域の清掃活動以外にも、南丹清掃では小学生に分別の方法や自然の自浄作用などの環境学習も提供しています。

山本一文:毎年、下水道処理施設に小学生が学習しにきていて、浄化槽や下水処理でどうやって水が綺麗になるかを教えていました。でも、「環境についてもっと詳しく知ってほしい」という私たちの想いもあり、去年から本格的に開始しました。

そして、社内でも小学生の環境学習を提供するチームを組成し、より良い学びに向けて実践を繰り返しています。

山本一文:「ポイ捨てしてはダメ」「ごみは拾う」という学習だけではなく、水がどのように循環しているかを教えることを大切にしています。

川にはどのような生態系が存在し、ごみを捨てることで生態系にどのような影響を与えてしまうか。そのような、「繋がり」に着目して環境学習を提供しています。

また、とにかく「わかりやすく伝える」を重視しています。「川に入った時に、足で石を踏むとヌルヌルしていると感じたことがあると思うけど、あの正体は微生物で、川の水をキレイにしてくれているんだよ」と子どもたちが体験していることをベースに伝えると理解してくれることが多いですね。

白木:環境学習を受けた子どもが「お母さん、その袋はプラって書いてあるじゃん」と親に指摘したという話を聞きました。子どもの頃から、ごみがどのように処理されるのか、水がどのように浄化されていくのかを知ってると自然と行動に移せるものなのかなと思います。

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他にも、南丹清掃では亀岡市を中心に近隣市町村で開催されるイベントに分別ごみ箱を設置する「エコステーション」に取り組んでいます。

山本尚:嬉しいことにここ数年、亀岡もさまざまなイベントを開催していて盛り上がりをみせています。でも、人が集まるほどごみの量も増えてしまいます。

そこで、その場でごみを6種類に分けて、参加者たちに分別の意識を高めてもらおうとのことでエコステーションが始まりました。

エコステーション

分別ができなければ、焼却するごみの量も増え、それだけCO2の排出量も多くなってしまいます。また、プラスチック製品はきちんと分別できていると9割が再利用することができます。

山本尚:チョコレートの包み紙でさえ、プラスチック製ならリサイクルすることができます。ただ、少しでも分別できていないと、全て焼却にまわされてしまいます。どう分別すればいいかわからない人でも、エコステーションに書かれた表示を見れば誰でも正しく分別できます。これがあることでほぼ燃えるごみがでなかったイベントもありました。

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環境事業部長 山本尚さん

楽しく取り組む、見てくれている人がいる

現在、南丹清掃が取り組む清掃活動や環境学習などは基本的に業務として活動しています。また、週末や祝日に積極的にボランティアとして清掃活動に参加する社員がいるほど意識が変わってきていると言います。

それぞれ本業があるなかでも、地域清掃や環境学習、エコステーションの設置など多くの活動を継続できる理由はどこにあるのでしょうか。

山本一文:やっている私たちが楽しいというのが一番ですね。不法投棄の撤去をしたときも、住民から「こんなに明るく清掃しているのを初めてみたよ」と言われるくらい、明るく楽しくやってます(笑)。

白木:あとは、ちゃんと見てくれている人がいることも大事ですね。2021年12月に環境大臣表彰を、2021年6月に知事厚労賞をもらいました。私たちは「地域清掃や環境学習で、こんな立派な賞もらえるの!?」とびっくりしましたが(笑)。

でも、見てくれる人がいることを私も従業員も感じています。だからこそ、続けてこられたのかなと思います。

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また、活動を継続するだけでなく、社内外問わず活動の輪が広がりつつあると言います。

大山:ボランティアの強制は一切やっていないのですが、「次の週末はどこの清掃に行くの?」と従業員から質問があり、清掃に関心をもってもらえていると感じることが多くなりました。

また、「プライベートで道路にごみが落ちているのを発見して、思わず回収した」という声も聞き、ごみ拾いが習慣化されていることが嬉しかったですね。

山本尚:私たちの活動がきっかけかはわからないですが、業界関係なく亀岡の企業が清掃や分別に取り組んでいるのを目にすることが増えました。もっともっと地域を巻き込んで、活動の輪を広げていきたいですね。

「人」がいないと何も解決できない

長年続けてきた南丹清掃の活動で、ごみの分別や清掃に対する住民の意識も変わってきました。しかし、本業があるなかで、どうしてここまで活動に熱量を注ぐことができるのでしょうか。

山本一文:私は京都市で育ったのですが、子どもの頃に亀岡市の大井川     で遊んだ楽しさが、なによりモチベーションになってるかなと思います。子どもの頃は、川が見えるとすぐに入っていて、それほど川遊びが好きでしたね。今でも、川に入ってごみ拾いをするだけで、ワクワクするほどです(笑)。

山本尚:でも、子供の頃に比べたら、圧倒的にごみの量が増え、川も汚れてしまいました。特に、2〜3年前はごみの量が多く、山盛りになるくらい。

亀岡は自然豊かな場所です。私たちが子どもの頃に遊んでいたくらい山や川が綺麗になり、安心して子どもたちが自然で遊べるようにしたいですね。

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最後に、白木さんが活動をしていくなかで大切にしている考えを共有してくれました。

白木:活動をするなかで「繋がり」を理解していくことが大事だと思っています。ごみが捨てられると川が汚れ、川が汚れると魚が取れなくなったり、海上汚染に繋がります。

そして、それらの課題を解決するには「人」がいないと何もできない。人が手を取り、協力の輪を広げることが大事だと感じています。

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ごみ拾いはSDGsの取り組みとして、誰もが簡単にできる手法の1つです。しかし、組織全体でごみ拾いを継続したり、地域住民を巻き込んだりするのは、グンとハードルが上がってしまいます。

南丹清掃はごみ問題を深刻に捉えつつも、南丹清掃自身が楽しんでごみ拾いをし、楽しく子どもたちと学んでいます。そして、誰でもごみの分別をできるような仕組みを作ろうとしています。その姿勢が、継続したり、地域住民を巻き込むヒントになってるのではないかと取材で感じました。

亀岡市SDGsアドバイザー高木超氏のコメント

南丹清掃のお取り組みをSDGsの視点からみると、誰もが安全な水とトイレを利用できるようにすること(目標6)や、住み続けられるまちづくり(目標11)の達成に、本業を通じて貢献してきたことがわかります。ごみを減らすことは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の達成に必要ですが、南丹清掃は子どもたちとも一緒に学びながら、誰でもごみの分別をできるような仕組みを作ろうとしている――このように、色々な年齢・立場の人が協力して課題解決に取り組むことはSDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に結びつく、とても大切な姿勢です。南丹清掃の皆さんのお取り組みは、亀岡の持続可能な未来につながる価値を創造し続けていると感じます。

高木先生高木 超(たかぎ こすも)

亀岡市参与(SDGsアドバイザー)

▶ 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教
▶ 国連大学サステイナビリティ高等研究所
  いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット 研究員

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