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SDGsの取組み最前線! 亀岡市の企業紹介(株式会社藤大)

ページID:0035534 更新日:2022年6月24日更新 印刷ページ表示

従業員は「全員女性」から始まった。株式会社藤大が目指す、子育てする人も、歳を重ねた人も元気に働ける企業へ

藤大

本インタビューは、より身近なSDGsの事例を知っていただくために、亀岡市内でSDGsを積極的に推進する事業者の実践事例を紹介します。

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従業員全員女性で創業し、誰もが働きやすい環境を目指している企業があります。

 

それが京都府亀岡市を拠点に電子部品の検査・加工・品質管理を提供する「株式会社藤大(ふじはる)」です。1993年に創業した藤大は、従業員5 名全員女性でスタートを切った珍しい会社です。

創業時から現在まで、藤大は子育てをする従業員が大半を占めます。子どもが急に熱を出したり、学校行事に参加しなくてはいけなかったり、子育てと仕事の両立は容易ではありません。そのような状況下でも、「ハイクオリティで付加価値の高い電子部品を、納期までに必ずお届けする」ことを掲げ、お客様の期待に約30年応えてきました。

そして2019年12月、藤大は全く事業領域が異なるカレー屋「京FUJIHARUカレー」をオープンさせました。電子部品の検査・加工・品質管理を提供している藤大がなぜカレー屋を開業したのか?子育てをする女性が多いなか、どのようにお客様の期待に応えていったのか?

誰もが働きやすい環境を整えながら、どのように持続可能な経営を実現しているのか?

これらの疑問を明らかにすべく、代表取締役の藤田大子さんとフードサービスグループ カレーチームリーダーの藤坂さとみさんにお話を伺いました。

子育てと仕事、どちらも両立させるには

藤大の創業は1993年。請負業者から機械や器具などの提供を受けて、検査や加工をする「内職」からスタートしました。当時は全員が女性従業員、30〜40代の子育て世代がほとんどを占めていたそうです。

とはいえ、従業員の多くが子育てをしていても、「子どもが運動会なので、部品を納品できません」とお客様に言うことはできません。同時にみなが「お母さん」だったからこそ、子どもの行事に参加したり、熱が出たら帰ったり、「子どもを育てる責任」も身に染みていました。

「仕事と家庭の責任を両立させるために、みなで助け合ってきた」と藤田さんは語ります。

藤田:まずは、「社員やパートなど枠組みにかかわらず、仕事の責任と向き合ってください」と面談で繰り返し伝えました。どんな役割でも、従業員一人ひとりが社会と向き合っている意識をもたないと仕事はできないからです。

しかし、意識だけでは仕事と家庭を両立できません。たとえば、小学校が運動会だと、小学生の子どもを持つ人たちはみんな同じ日に仕事を休むことになります。そこで、運動会などの行事があるときは、前日に多めに作業をしたり、行事後に会社に戻ってお客様へ納品をしてもらったり、みなで助け合っていく工夫をしてきました。

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株式会社藤大 代表取締役 藤田大子さん

 

運動会に参観日、入学式、卒業式と子どもたちの行事は多いもの。また、小さい子どもだと、急に熱が出て帰宅せざるをえない場合もあります。そんな中でも、互いに助け合い、納期遅れを出すことなくお客様にハイクオリティな部品を提供できたのは、社内のコミュニケーションを大事にしてきたからだと言います。

藤田:困り事や悩み事を共有できるように「しっかりコミュニケーションをとろう!」と、創業時から声かけは心がけてきました。

子育てや仕事でハプニングが重なっても、従業員同士でコミュニケーションがとれているだけ「こうすればいいのでは?」と解決の糸口が見えてきますから。

また、創業当時はパート社員として働いていた藤坂さんは「仕事だけでなく、私生活の相談もしやすかった」と語ります。

藤坂:創業当時は人数も少なかったのもあり、社長と従業員分け隔てなくコミュニケーションをとってました。そのため、仕事でわからないことがあったらすぐに聞けましたし、家庭の相談も気軽にしていましたね。

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フードサービスグループ カレーチームリーダーの藤坂さとみさん

 

家庭優先を気持ちよく認められる場へ

従業員が全員女性だったことから働き方を工夫し売上を伸ばしてきた藤大ですが、2005年に事業の大きな転換点がありました。当時、多くの工場が日本から海外へ移転。藤大も請負う仕事がなくなってしまうのではと大きな不安を抱いていました。

そこで「大型機械のケーブル加工をお願いしたい」という要望をもらい、引き受けることを決定しました。しかし、大型機械のケーブルだと20〜30mの大きさが当たり前で、女性だけでは運べません。そこで、男性社員を初めて雇用することになったのです。

女性だけだった社内で、ある日突然男性も働くようになり、トラブルはなかったのでしょうか。

藤田:子どもの事情で家に帰る人を見た男性社員から「女性に優しすぎないですか?」と言われたことがあります。

そのときは、「子どもが熱を出したり、行事があったりすると帰らないといけない。仕事の責任をもちながら、それでも家庭優先になるときがどうしてもあるけど、そこを気持ちよく認めてあげられる職場にするのが大事なのでは」と話しました。

そもそも、子どもに何かあったら女性が駆けつけないといけないという認識が、まだまだ社会には根強く残っています。子育てをしながら仕事をするということは、負担が大きいこと。そこをまずは理解していただかないとと思っています。

男性社員を雇用した当時こそは、男性と女性の間に壁を感じていたものの、コミュニケーションを重ねるごとに徐々にその壁はなくなっていったそうです。

現在、藤大では男性社員の育休を推進しています。その理由として、「男性が育児に参加して、初めて女性が仕事しながら子どもを育てる大変さが実感できる。それをわかってほしいという願いがあります」と藤田さんは語りました。

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「働きたいけど、もう働けない」から始まった京FUJIHARUカレー

丁寧なコミュニケーションでさまざまな課題を乗り越え、誰もが働きやすい環境をつくってきた藤大。そんな藤大が2019年12月に、カレー屋「京FUJIHARUカレー」を突然オープンさせました。電子部品の検査・加工・品質管理が本業であるにも関わらず、なぜいきなりカレー屋?と誰もが疑問に思うことでしょう。

しかし、突拍子もなくカレー屋を開業したのではなく、「藤大が抱えていた大きな課題を乗り越えるため」と言います。

藤田:創業から約30年、子育てをしながら藤大で働いている従業員の多くが今では還暦を迎えています。藤大の事業である精密機器の外観検査は、年齢による視力低下のなか長く続けるのは難しいです。まだ働きたい気持ちはあるのに、視力低下で退職も余儀ない状況で、なんとかできないか考えていました。

同時に、社内からも「下請けの仕事だけではなく、藤大で何かモノづくりがしたいです」という嬉しい声が上がっていたんです。

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なんとかして歳を重ねても長く働けるようにできないか、藤大で新しい事業をできないかと考えを巡らせる中で、「藤大の強み」を活かしたいと考えた末、辿り着いたのがカレー屋でした。

藤田:藤大の強みは、女性が多く、主婦が多いことだと思いました。そこで、飲食店だったら長年の料理経験を活かせるし、年齢を重ねても働けると思ったんです。

数多ある料理の中でカレーを選んだのは、高齢化する亀岡で相性がいいと思ったから。子どもがいるときは、一気に大量に作れるカレーは家庭で好まれます。でも、子どもがいなくなると、少量を作るには手間がかかり、あまりカレーを作らなくなるんです。

そこで、一手間かけて体に優しいカレーを作ったら亀岡に住む人たちにも喜ばれるのではないかって。

「従業員の1人でも反対したら、カレー屋を開業するアイデアは白紙にしようと思っていた」と語る藤田さん。緊張しながらも「全社会議でカレー屋をやりたい」と共有したところ、なんと全員が快く賛同したそうです。

電子部品の検査をやる藤大が全く未知の領域であるカレー屋開業へ、大きな一歩踏み出します。

 

人に、地域に優しいカレーが藤大の夢を背負う

カレー屋を決心したものの開業までは約1年かかり、商品開発は試行錯誤の連続だったと言います。藤田さんとカレーチームリーダーを担当する藤坂さんは理想のカレーに近づけるため、カレーの研究に明け暮れていました。

藤坂子どもやお年寄りが食べられて、体に良いものを作りたかったため、スパイスカレーではなく野菜いっぱい、優しい味の欧風カレーを目指しました。

でもなかなか理想とする味を作るのは難しく、カレーの本拠地である北海道まで行ってカレー巡りをしたり、毎日1日2食カレーを食べたりしてました。ときには、「こんなのお金を払えません!」と試食してもらった人に厳しい意見をもらったり(笑)。でも、めげずに試作を繰り返し作ったり、カレー作りを学んでいきました。

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数えきれない改良を繰り返し、辿り着いたのが玉ねぎをふんだんに使い、地域の食材で彩ったカレーでした。

藤坂:京FUJIHARUカレーで提供するカレーは、鍋いっぱいの玉ねぎを飴色までしっかりと炒めるのが特徴です。たくさんの玉ねぎを炒めることが、優しい味のカレーになる秘訣です。また、野菜トッピングは地域の採れたて野菜をたくさん使っています。

新型コロナウイルスが流行する前は、お年寄りのリピーターが一番多く、「ここのカレーは毎週でも食べられる」と言われるほどでした。また、病院帰りにカレーを食べにきてくれる人も多くて、嬉しいですね。

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右が飴色になる前の玉ねぎ、左が飴色になった玉ねぎ

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プレーンカレー×エビカレーの「あいがけカレー」にカツトッピング

開業から約2年、京FUJIHARUカレーの店内は、子どもやお年寄り、若い男性や女性など、年齢や性別にかかわらず多くの人たちで賑わっています。

そうした光景を嬉しそうに眺めながら、藤田さんは「京FUJIHARUカレーは藤大の夢を背負っている」と、カレー屋への想いを語ります。

藤田:京FUJIHARUカレーは1つの事業としては、しっかり稼いでいくのは厳しい面もあり、電子部品の検査などのメイン事業に支えられている部分もあります。

一方で、藤大で働いている人はみな京FUJIHARUカレーを応援しています。キッチンカーでカレーを提供する際は、男性社員が運転してくれたり。みなの想いがあるから、頑張ってこれているというのもあります。

「年齢を重ねたら京FUJIHARUカレーで働きたい」「藤大での初めてのモノづくりを成功させたい」という夢を京FUJIHARUカレーは背負っているんです。

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年を重ねても働き続けるためには、何より「元気」が大事

従業員全員が女性で創業した時も、京FUJIHARUカレーを開業した時も、誰もが働きやすい環境を藤大は目指してきました。今後はどのような企業を目指すのかを聞くと、「亀岡に必要とされる企業でいたい」と語ります。

藤田:私たちが亀岡で事業ができているのは、地域の人たちに支えられているからこそだと感じています。そのためにも、京FUJIHARUカレーは「進化するカレー」をコンセプトにしていて、みなに必要とされ続ける努力をしないといけないと思っています。

また、地域の人に支えられているからこそ、従業員一人ひとりが「社会貢献させていただいている」という気持ちをもって、社会に向き合うことが大事だとなと。それができて初めて、地域の方から声をかけてもらったり、必要とされるのかなと感じています。

さらに企業として進化するためにも、2021年8月藤大は健康事業者宣言を行いました。その理由は、「高齢化するなかで、何よりも元気が大切になるから」と語ります。

藤田:いくら技術があっても、時間があっても、「元気」がないと働けません。健康であり続けられるからこそ、働けると思っています。

でも、どれだけ予防していても高齢により病気になることはあります。昨年、闘病をしていた従業員が、会社に復帰することを目標に頑張ってくれました。私たちは、「戻りたい」と思える場をつくり、人と人との繋がりを大事にしながら、今後も仲間と事業を運営していきたいと思っています。

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フードサービスグループ カレーチームのみなさん

取材を通して、藤大の真の強さは「どんな状況でも人を大切にしてきたこと」だと感じました。そのために、従業員と丁寧にコミュニケーションをとり、困り事があれば、みんなで解決していく。その一つ一つの積み重ねがあったからこそ、結果的に誰もが働きやすい場になっていったのではないでしょうか。

藤大も、京FUJIHARUカレーも、まだまだ進化の途中。これからも、どんな取り組みが見られるのか楽しみです。

亀岡市SDGsアドバイザー高木超氏のコメント

電子部品の検査等が本業の企業が「従業員が歳を重ねても長く働けるように」との思いからカレー屋を開業した――この経緯は、SDGsの目標8で掲げられた「働きがい」の実現につながります。また、文中の藤田さんのお言葉は「女性はこうあるべき」といった性別に基づいた無意識の思い込みが社会に存在していることに気づかせてくれます。これはSDGsの目標5「ジェンダー平等をなくそう」の達成に必要な視点です。ほかにも、地元の食材を使った地産地消によって輸送時の温室効果ガスの排出やエネルギーの使用が削減されているなど、SDGsの観点から見ると、京FUJIHARUカレーはいくつもの新たな価値を創造していることが分かります。

高木先生高木 超(たかぎ こすも)

亀岡市参与(SDGsアドバイザー)

▶ 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教
▶ 国連大学サステイナビリティ高等研究所
  いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット 研究員

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