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学校だより 2月号
昨日が節分で、本日は立春となり、 暦の上では 、もう春になります。まだまだ寒い日が続くと思いますが、少しずつ暖かく優しい「春風」が吹いてくることを願いたいと思います。
「春風」というと、「春風秋霜」という言葉を思い出します。佐藤一斎(さとういっさい)が明治の先駆者(勝海舟、坂本龍馬、吉田松陰、木戸孝允、伊藤博文、山形有朋)たちに心得を述べた際に使われた言葉です。「春風(しゅんぷう)をもって人に接し、秋霜(しゅうそう)をもって自らをつつしむ」と読み、「春の風のように温 かい気持ちをもって人には接し、秋の霜のように厳しく自分自身に対しては行動を正しましょう。」ということのようです。その言葉を思い出しながら、3学期の始業式に生徒たちに以下の話をしました。
今年は、阪神・淡路大震災が発生してから、丸 30 年を迎えます。そして、ちょうど1年前には能登半島地震が起こり、大勢の方が今もなお 避難所で生活しておられる状況です。能登半島の少しでも早い復興を願うと共に、今日顔を合わせて始業式を迎え、挨拶できること、当たり前の日常を過ごせる喜びをみんなで感じ、感謝したいと思います。
実は、2学期終業式の翌朝、寒い中でみなさんの教室のエアコン のフィルターや黒板の上にある扇風機を、学年の先生方が手洗い場できれいに洗っておられたのです。改めて、当たり前の日常は、多くの方々の優しさで築き上げられていることを実感しました。そして、この当たり前を守るためには、みんなの日頃の努力が必要であることも確認したいと思います。
さて、3学期となりました。2学期の終業式で、皆さんに冬休みの宿題を出しました。覚えていますか。「命」「健康」「人権」について、皆さんの優しさを、どのような分野に向けて行動するかを冬休みに考えて欲しいというものでした。
ちなみに、皆さんに宿題を出した2学期の終業式の日、ある先生が私に「優しい」という漢字の意味を教えてくださいました。優しいという漢字は、悲しいという意味の「うれい」という字の横に「にんべん」があります。つまり、「憂いている人、心に悲しみを持っている人のそばに、横にいるからやさしい。」という のです。そして、「優勝」の優とも書き、「すぐれている」とも読みます。人のさびしさやわびしさ、つらさに敏感でいることが優しさであり、人として一番すぐれている。」と太宰治が言っているのだそうです。その先生は、「今日の校長先生のお話を受けて、クラスでそのことを生徒たちに伝えました。」と言っておられました。校長である僕に対する優しさを感じました。
実は、終業式の宿題に、すでに答えてくれている人たちがいます。実は、ちょうど二年前、今の3年生が 1年生の時、京都新聞の「若いこだま」という投稿欄に、三人の人たちの意見が 掲載されていたのです。そこには、「戦争を自分の身の回りのこととして考えてみる。」「何気ない平和を大切にする。」「戦争について知り、引き継ぐことが平和な時代につながる。」と自分なりの考えが書かれていました。す でに、この冬休みに自分の優しさを向ける分野を決めている人は、どのように行動するかを考えてください。そして、まだ決めかねている人は、是非「命」「健康」「平和」にどのように優しくできるか考え、どう行動するのがよいかを決めて欲しいと思います。
では、いつもながらの問題です。お相撲の行司さんが、何と言っていますか。「はっけよーい。のこった。」です。
では、どういう意味か知っていますか。漢字で書くと「発気用意」(はっきようい)です。
これは、「不発気不生力」(気を発せずんば力生ぜず):「気を発しなければ、力が生まれない。」「不用意不成技」(意を用いずんば技ならず):「思いを使わ なければ、技にはならない。」という言葉からきています。要するに、「発気用意」は「体中の気力を出して、 よ く考えて工夫して勝負しなさい」と言っているのです。「残った」は、 まだ勝負がついていないということです。
「気力を出して、よく考えて工夫して勝負する」ことは、何も相撲に限ったことではなく、他のことにも通じるものです。スポーツをする時、勉強をする時、将来仕事をする時にも、物事を成功させ、実現するためには、次の二つのことを大切にして欲しいと思います。
一つ目は、「と りあえず、がんばるかぁ」というゆるい気持ちではなくて、「よーし、 やるぞ!」と気力を充実させること。二つ目は、 「計画や作戦」をしっかりと考えて実践することです。
皆さんが新年、新学期を迎えるにあたって立てた目標に向けて、「はっけよ~い。残った残った。」の思いで頑張ってください。
川口 研一