本文
第135回 ヘリコバクター・ピロリ菌と胃癌
内科部長 上原 有紀子
専門分野 消化器病学
オーストラリアのロビン・ウォーレン名誉教授とバリー・マーシャル教授がヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を発見し、2005年のノーベル医学生理学賞を受賞されました。ピロリ菌の研究により胃癌や胃・十二指腸潰瘍・胃炎の発症はピロリ菌の胃への感染が引き金になることが明らかとなり、この発見はピロリ菌を除去する除菌治療へとつながり、胃癌の予防に革命をもたらしました。
胃癌の原因のほとんどがピロリ菌感染によるものであるといわれています。日本人のピロリ菌感染率は、65才以上で80-90%、20-30才代では20%前後との報告もあり、近年、衛生環境の改善に伴い感染率は低下傾向です。ピロリ菌感染の有無は胃カメラ観察・組織培養、尿素呼気試験、血液・尿・便検査などで判定され、ピロリ菌除菌治療により90%前後のピロリ菌感染者が除菌に成功するといわれています。胃癌は早期発見・適切に治療すれば治癒する癌です。ピロリ菌除菌成功後も胃カメラによる定期観察で胃癌の早期発見に努め、健康寿命をのばしましょう。
ヘリコバクター・ピロリ菌
(顕微鏡写真)