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第130回 インフルエンザの予防接種について
小児科部長 寺町 紳二
専門分野 小児循環器
秋冬に話題となるのがインフルエンザの予防接種。冬の流行に備えての接種ですが、その効果についても話題になります。予防接種をすると、体の中にインフルエンザウイルスと戦う抗体が作られます。でも、その抗体は血液の中にあり、喉の粘膜表面に滲み出てくるのはごく一部です。呼吸によって吸い込まれたインフルエンザのウイルスは、熱が出るまでに喉と鼻の合流点あたりの粘膜表面でどんどん増殖します。ところが、そこにはウイルスを退治するのに十分な抗体がありません。つまり、残念ながら今の予防接種では喉でのウイルス増殖を抑えることができず、かかることを防ぐのは難しいです。しかし、一旦ウイルスが体内で広がり始めると、血液の中の抗体が活躍し、重症化は防げます。また、軽く終わるということは、ウイルスをばらまく期間が短くなり量も少なくなるので、人にうつす危険性が低くなります。その結果、流行を抑えることができます。かからないためではなく、重症化しないためにみんなが予防接種をすると、結果的に個人がかかることも予防できます。予防接種はみんながうつと大きな意味を持つのです。