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ページID:0004382 2023年4月1日更新

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病院長のごあいさつ

亀岡市病院事業管理者兼亀岡市立病院病院長 田中 宏樹

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 前任の玉井和夫より引き継ぎ、2023年4月より亀岡市病院事業管理者及び亀岡市立病院病院長を拝命致しましたので、就任のご挨拶を申し上げます。

 私は昭和63年に京都府立医科大学を卒業し、同大学附属病院助教その他を経験した後、2004年の亀岡市立病院開院時に当院に奉職致しました。

 当時はすでに地方の小規模病院の統廃合が話題に上る時代でしたが、わずか全病床数100床の小規模急性期病院という全国でも類の見ない試みで出発しております。急性期医療にはさまざまな高額検査機器や治療機器が必要となります。しかし、十分な規模が無いと効率が悪く、投資に見合った医業収入を得ることは容易ではありません。それでも開院当初は京都府立医科大学の手厚いバックアップもあり、整形外科、消化器疾患ではかなりの手術症例をこなしており、大学関連病院の中で最も早くに鏡視下噴門側胃切除や鏡視下肝臓切除など、当時の最先端の高難度手術を成功させ、亀岡市民及び市内ご開業の先生方の信頼を得ておりました。一方でやはり小規模であるがゆえすべての市民の要望に応えることはできず、ご不満の声もよく聞いておりました。

 数年が経過し常勤医師の中で徐々に退職者が増えていった時期に新研修医制度が始まり、全国的に医師不足及び大学の医師派遣機能の低下と若い医師の大病院志向が強まり、大学としても助けたい気持ちは十分にあったとは思われますが、結果的に内科を中心に医師が不足し、さらにできることが限定的となり、信頼を損ねるという負のスパイラルに陥っていた時期がありました。

 その時に前任者である玉井和夫が病院長に就任し、京都府立医科大学整形外科教室との太いパイプにより人材を集めてこられ、立て直しを図りました。脊椎センターを始め、整形外科疾患では広く遠方からも患者様を呼べる態勢を整え、市からの繰入金を入れてではございますが、平成30年以降、黒字化を継続して達成しております。またこの手腕が他の医局にも波及し、内科医師の派遣が増え、総合診療で幅広くニーズに応えつつ専門性もある医師が充足してまいりました。ただ、一度失った信頼を取り戻すことは容易ではなく、十分に活躍していただいているとは言えない状況がございます。

 その後に世界を新型コロナウイルスの猛威が襲い、この亀岡でも高齢者を中心にクラスターと呼ばれる集団感染が何度も発生しました。感染流行の初期には重症者の救命に力点が置かれ、ECMOなどを使用できる高度医療機関がフォーカスされましたが、感染爆発が起こると重症者の何十倍にもなる中等症患者対応が課題となりました。酸素とモニタリングさえあれば、救命できる人が自宅で亡くなったりすることが、大都市では起こってまいりました。日本でこの中等症の患者を受け容れ、重症になる患者を速やかにトリアージして高次機能病院へ送り込み、また回復した患者を受け容れてきたのは公立病院だけではありませんが、主にはこれら地方の統廃合の対象とされてきた小規模公的病院でした。

 当院でも内科医師を中心に看護部も頑張ってくれたお陰で疑似症例と診断確定者の中等症Ⅱまでの入院治療からワクチン接種(流行期には休日返上でも行いました。)、発熱外来、陽性者外来と出来る範囲で広くニーズに応え、市民の期待にもある程度答えることができたと自負しております。

 2023年はこのコロナウイルス感染症も5類に再分類されるということでありますが、ウイルス自体が再分類で減る訳ではありません。しかし、各種のコロナに伴う補助金などは無くなっていくことになります。今までお荷物とされてきた地方の小規模公立病院にとって、コロナ禍はある意味存在感を発揮できたチャンスでもありましたが、今後はまたどう存続させていくか難しい時代が待っているものと認識しております。

 当院では収益の柱として専門的な高度治療を行う脊椎センターの役割を発展させつつ、同時に不採算であったとしても公立病院としてなすべき使命も担っていくことで市民の役に立ち、有って良かったと思っていただける病院作りを目指してきました。私も前病院長が立てたこの方針を堅持し、さらに充実していきたいと考えております。コロナ後において不採算でも公立病院が行うべき使命は何でしょうか。小規模病院が大規模基幹病院と同じ医療を行うことには無理があります。幸い亀岡市からは京都市が近く、世界有数の高度医療を行っている大学病院が2つもありますが、ご存じのとおり、治るまで何ヶ月でも入院出来るわけではありません。隣接市の基幹病院との連携を強化して回復期の市民を受け容れ、家に帰るまでフォローできる病院がまだまだ亀岡には足りていないと考えております。そのため今年から当院でも在宅診療に力を入れるために訪問看護ステーションを開始致しました。従来からある包括ケア病床からシームレスに在宅まで繋ぐことで安心して住む事が出来、最期まで地域で過ごせる環境を提供することが亀岡市立病院の存在意義の一つであろうかと考えております。

 市民の皆様には亀岡市立病院に対し、なにとぞこれまでどおりのご支援とご鞭撻をいただけますようよろしくお願い申し上げます。

令和5年4月