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第151回 喫煙と麻酔
麻酔科医長 坂根 慶弥
専門分野 手術麻酔
全身麻酔で手術を受けた喫煙者の人は、医師や看護師から「手術日まで必ず禁煙をお願いします。また、これを機に永続的に禁煙してみませんか?」と言われた経験があると思います。
喫煙はそんなに麻酔や手術にに対して悪いの?
はい、断言します。悪影響しかありません。
現在進行形の喫煙者は喫煙期間・本数を問わず危険です。また、Brinkman Index(喫煙本数/日×喫煙年数)が500を超える人、肺気腫やコントロール不良の気管支喘息を指摘されている喫煙歴のある人なども同様に危険です。
喫煙が人体へおよぼす悪影響は、各種癌の発症リスクなどが知られていますが、全身麻酔においては「痰の分泌量が著明に増えることによる気管や気管支の急な窒息状態(無気肺)、喉頭・気管・気管支痙攣による窒息様・喘息様の発作、炎症が急速に肺全体へおよぶ急性肺障害、術後肺炎など」といった術中・術後の呼吸器合併症の発症リスクが3~5倍上昇すると言われ、致命的になることもあります。また、手術後に創部が膿んだり、心臓病が発症したりするリスクも有意に上がると言われています。上記のリスク軽減には最低4週間の禁煙が必要とされています。
全身麻酔手術を控えた人は勿論、現在健康な人も、禁煙に向けて今一度考えていただければ幸いです。