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学校便り10月号
「事実に基づいて 真実を知ろう」
9月26日(木曜日)27日(金曜日)に開催しました文化祭は、全校生徒の力を結集し、まさに「文化の祭典」の二日間でした。美術部,学習文化部,教科による作品展示、1・2年生のクラス合唱と学年合唱、3年生の演劇、フィナーレには、吹奏楽部の演奏、3年生学年合唱、全校合唱で締めくくられ、全校生徒と先生方のみんなが一つになれる、素晴らしい文化祭となりました。校区適正化に伴い、生徒数が増え、体育館が狭く、保護者の方々には該当学年のみの参観となりました。また、生徒の移動経路確保のため展示見学もしていただけず、大変申し訳なく思っております。翌日開催のカルチャーフェスティバルの実施や卒業DVDに収録するなど、多くの方々に生徒の活動を参観いただけるよう、今後とも工夫して参りたいと思います。
二学期に入り、朝、校門前で登校指導していると、一人の生徒が「始業式の校長先生のお話しが涙の話だったので、涙に関する問題です。」と声を掛けてくれました。「一生で流す涙の量はおよそどれくらいだと思いますか。」との問いでした。さらに「答えは、64リットルです。」と教えてくれたのです。式辞の話に興味を持ち、気にとめて、自分なりに調べ、話し掛けてくれたことが、とても嬉しかったのです。
そして、偶然にもその週に次のような新聞記事に出会いました。「日本航空(ANA)が、海を高速で泳ぐサメに学び、機体と空気の摩擦抵抗を減らす『サメ肌』の特殊フィルムを装着した航空機を就航させた。抵抗を減らし、燃料効率(航空機1機につき年に1%ほど)を向上させ、温暖化ガス排出削減を目指す。」とのことでした。
生物の形、機能などに学ぶ技術を「バイオミメティクス(生物模倣)」と呼ぶそうです。古くは、レオナルド・ダ・ビンチが鳥の観察から飛行機を構想したところから始まり、蚊の吸血針から痛くない注射針、ハスの葉のはっ水性をヒントにしたヨーグルトのフタなども挙げられます。その日の朝に、喜びと共に、事実を詳細に正確に知ることの大切さや発展性を教えてもらったように思います。あわせて、以前読んだ本のことも思い出しました。次の問いに解答してみてください。
(1) 「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?」
「A:約2倍 B:あまり変わらない C:半分」
(2) 「自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?」
「A:2倍以上になった B:あまり変わっていない C:半分以下になった」
(3) 「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?」
「A:20% B:50% C:80%」
正解は全て「C」です。何問正解できましたか。
その本には、同様の問題が13問あります。無作為に答えを選んだとしても、正答率は1/3となるはずです。ところが、オンラインで1万2千人が解答したところ、正答率は約16.6%という結果でした。この結果は、「常識だ」と考えているものの中に、さまざまなバイアス(先入観や偏見)がかかっていることを表しています。そして、人間は10の思い込みを本能的に抱えているとも記されています。その本能の中には、「ネガティブ本能(否定的・消極的に考える)」「恐怖本能(現実よりも恐れる)」があります。この本能は、人間の脳に原因があり、狩猟採集民だった祖先の頃にはとても役立つものでしたが、現代人にとっては存在しない危険に怯えるといった悪影響をおよぼしているとされています。
人は行動を起こそうとする時に、恐怖本能やネガティブ本能が邪魔をして、思い切った行動や挑戦ができないことが多いのではないでしょうか。挑戦しようと思った時に弱気になったり、行動しようと思った時に行動する勇気が生まれないことはありませんか。行動ができない時には、何が怖いのか、何が心配なのか、事実や物事を詳細に分析し、「正確に事実を知ること」と「事実に基づいた真実を知ること」が大切だと感じます。
生徒の皆さんには、事実に基づいて真実を知り、「挑戦する心」を大切にしつつ「あきらめない心」を持ち続けてほしいと心から願っています。
教職に身をおく者には、励ましの声を掛けることにとどまらず、生徒たちがあきらめそうになった時には原因や事実を共に追求し、挑戦することに尻込みしそうな時にはその時の気持ちをしっかりと受け止めつつ、見通しを持って、挑戦する態度を育成することこそが求められていると思います。また、このことは、子どもたちにとって身近な大人である保護者の皆様、地域の方々と共に育てていく必要があります。今後ともご指導ご協力の程、よろしくお願いいたします。
校長 川口 研一