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学校だより 5月号
「この一年間、大切にして欲しいこと。」
桜花満開の中、入学式と1学期の始業式を行うことができました。春は、新しい出会いがあります。希望に満ちた新1年生と新たな教職員を迎え、本年度の教育活動をスタートさせました。入学式では、厳粛な雰囲気の中、緊張しながらも中学校入学の喜びと本校の一年生として頑張ろうとする新入生の皆さんの決意を感じ、とても嬉しく思いました。保護者の皆さまは感慨深いものであったと思います。2・3年生には、体育館にて三年ぶりの新任式・一学期始業式を行い、年度当初に生徒たちに以下のような話をしました。
昨年度末から、生徒の皆さんにはこの一年間の目標や夢を決めること、そしてその目標に向けての「良い準備」をして欲しいと話をしてきました。しかし、その目標に立ち向かう中で、きっといくつものハードルや大きな壁が現れるはずです。その困難に出会ったときにこんな視点で乗り越えて欲しいと、次のような問題を出しました。
「マッチ棒3本を縦に並べると『川』の字になります。その川の下に1本のマッチ棒をおくと『山』という字になりますが、マッチ棒を4本だけ使って、たんぼの『田』という文字を作ってください。」
この問題の答えは、いくつか考えられます。まずは、力わざでの解答です。
「3本のマッチ棒を半分に折って、6本にして『田』をつくり、1本を余らせる。」
さすがにこの解答では、納得のいかない人はいると思いますが・・・問題を聞いてすぐに、「もう分からない。考えるのをやめよう。」と考えるより、ずっと素晴らしい行動だと思います。体育祭や文化祭の取組や部活動の試合中には、きっと困難な課題が現れてくるはずです。その時に、課題の大きさに圧倒されてあきらめたり、面倒くさいからやめてしまったりすることは、何としても避けて欲しいのです。少々力わざになってもかまいません。何とか、仲間と相談し、協力しながら、あきらめない気持ちを持って欲しいと思います。
次の解答は、「田んぼの『田』は、漢字で書くこととは、指定していないので、ひらがなで『た』という字を書く。」というものです。
学校生活の中で困難に出会ったときに、少しくらい妥協してでもよいので、「解決できることがないか。」を、仲間と話し合いをして欲しいと思います。そして、みんなで話し合う中で、納得解や妥協点や解決策を見つけてください。そのために、みんなには心理的安全性を確保して欲しいと思います。『心理的安全性』とは、組織や集団の中で、自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。そして、心理的安全性を高めるためには、次の4つの環境を作り上げることが大切です。
一つ目は「話しやすさ」。話しやすい雰囲気を大切にしてください。
二つ目は「助け合い」。お互いに助け合える環境を作ってください。
三つ目は「挑戦」。結果を恐れずに、挑戦することを歓迎できる環境を作って欲しいと思います。
最後に「新奇歓迎」。常識にとらわれず、一人ひとりの強みや個性、新しい発想を受け入れる環境を是非作ってください。最初の力わざの解答である「マッチ棒を折る」という解答を、「なるほど」と受け入れる環境を作って欲しいのです。
さて、最初に挙げたマッチ棒の問題の最適解は、「マッチ棒を束ねて、火のつかないおしりの方から眺める。四角のマッチ棒をおしりから見て『田』の字に見えるように束ねる。」というものです。マッチ棒を側面から見るのではなく、下から見るという「視点」を変えることがポイントです。皆さんに、最後に伝えたいことは、見る視点を変えることを大切にして欲しいということです。
困難や課題にぶつかった時には、まずは「あきらめない」、そして「視点を変えてみる」。最後には、心理的安全性を大切にしながら、みんなで話し合って、みんなが納得できる克服策を見つけ、仲間で大きな壁やハードルを乗り越えて欲しいと思います。
以上のことを大切にすれば、どんな結果であっても、悔いの残らないものになると思います。詳徳中学校のみなさんの健闘を心から祈っています。
保護者の皆様、地域の皆様、心が大きく揺れる思春期の生徒たちに、これまで同様、各方面からのご支援をよろしくお願い申し上げます。
亀岡市立詳徳中学校長 川口 研一