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第162回 アルコール消毒だけで安心していませんか?
小児科部長 寺町 紳二
専門分野 小児循環器
新型コロナ感染症が現れて2年以上経ち、感染予防でマスクとアルコールによる手指消毒が当たり前の生活となりました。それにより新型コロナウイルス感染症流行をある程度抑え、ついでにインフルエンザの流行を予防する効果もあると言われています。でも、アルコール消毒は万能でしょうか?
アルコール消毒は、ほとんどの細菌に効果がありますが、ウイルスの中には効果のないグループが存在します。ウイルスにはエンベロープという膜に全体を覆われているタイプと覆われていないタイプがあり、アルコールはエンベロープを攻撃してウイルスの構造を破壊することで消毒するので、エンベロープの無いウイルスには効果がありません。具体的には、小児で流行る手足口病やヘルパンギーナの原因となるコクサッキーウイルスやエンテロウイルス、アデノウイルス、腸炎の原因となるノロウイルスやロタウイルスがそのグループです。だから、これらの病気を予防するには、アルコール消毒ではなく、石鹸と流水で手を洗うことが大切です。アルコール消毒だけで油断してはいけません。